4K幼馴染は溺愛がすぎる

ご機嫌になった夕を乗せた車を縦に並べて走り鈴音は杏奈達と目的地へと向かう。
道中、これでもかと言うほどに質問をされる。
付き合った時にいなかった杏奈は、0から説明しろ!!と当時のあゆちんや沙奈以上に質問攻めにされ、到着した頃にはもう別の意味でヘトヘトだった。駅から10分ほど車を走らせてさらに山奥に進み、着いたのは最近できた絶景を楽しめるグランピング施設。

年末が近い事もあり、利用者は鈴音達の他に1グループしかいないようだった。
最近出来たという事もあり、施設はとても綺麗でオシャレ。人気があるのも頷ける。少々立地が悪いのが難点だが、この絶景と立地どちらを取るかと言われたら迷わず絶景を取る。そう思えるほどに綺麗な景色が目の前に広がっていた。

予約した本人の鈴音が受付をささっと済ませて鍵を受け取りみんなのところへと戻る。

「お待たせお待たせ〜!!C6だって!1番夜景綺麗に見えるとこらしいよ!!」

みんなもそう聞いておぉ~!と目を輝かせてC6の看板のある所へと車に乗って移動をする。

ドームテント型の建物で、ガラス張りのように中が透けて見える作りになっている。
皆アラサーである事を忘れたかのようにキャッキャとはしゃぎ倒している。

夕はと言うと、車を降りた直後からピトッと鈴音にひっついて離れようとしない。

「ゆ、ゆうさん??歩きづらくない??」

そう聞くも、答えは分かりきっており

「全然。すずと離れた方が歩きづらい」

と意味のわからない事を即答された。

ドームの庭のような所には屋根や椅子が設置されており、最新のバーベキューセットも置かれてあった。
外で山奥という事もあり極寒ではあったものの、レンタルしたヒーターを所々に設置すると結構暖かくて外でも平気だった。

そろそろ晩御飯の準備をしようという事で、みんなで分担をして取り掛かることに。
食材班、火起こし班、飾り付班、3つの班に別れて行動をする事に。
夕にはあっくんと2人で予定通りに食材班を任せることに。
当たり前の様に鈴音から離れようとはせずに、鈴音に後は"ずっと一緒って言ったのに"と、また不機嫌になっている。しかし、鈴音の後ろで佳子が右手を握りしめているのが見えている為、夕も文句を言うに言えないのだ。

しかし、鈴音としては佳子に感謝である。
これから鈴音は少しサプライズのために別行動をするのだ。
夕には鈴音は飾り付け班と言ってあるのだが、実際は鈴音が作った飾り付けを杏奈に渡して、鈴音は自分の準備を始める予定である。

上手く夕を騙せたかは心配だが、割とすんなり食材の買い出しで少し山を降りたスーパーに行ってくれるようになった為、鈴音はホッと胸をなでおろした。

そして夕を見送った鈴音は皆に後を任せて先程来た受付に一人でやってきた。

「お!さっきぶりだね~!なんかあったかな?」

フレンドリーなおじさんが片手をひらひらとさせながら、鈴音の方にやってくる。

「すみません、実はもう一部屋予約取ってるんですけど、、。志倉です。」

まだ籍入れていない為、慣れ親しんだ自分の苗字を名乗ると

「あ〜!志倉さん!確かにもう一部屋予約入ってるわ!1番人気のドーム!ここもまたおすすめだよ~!特にカップルなんかには!逢い引きか〜??」

と片眉を上げてニヤニヤとしながらそういうおじさん。

「逢い引きなんて!ちゃんと周りには伝えてますよ!」

バカ正直に答える鈴音も鈴音である。
すると、おじさんはガハハと豪快に笑い手書きのマップのようなものをくれ

「この星印のある場所に夜行ってみな。いーもん見れるから。でも!森ん中だから迷わねーように気をつけな!ほい、あとこれドームの鍵な!」

楽しんでってな~と、また奥の事務所に戻って行った。

よしっと自分に気合いを入れて鍵を貰ったドームへと急ぐ。
部屋に入ると、風船や花で部屋を飾りつける。
一人でするのはさすがに疲れるな、、、と思いながらも、喜ぶ夕の姿を想像すると気合いが入って次々と進めていく。

皆に準備は別行動にさせてもらい、夜は2人で過ごしたいという自己中な提案をした際、みんなは快く受け入れてくれるだけでなく、手伝おうか?と優しい提案までしてくれた。
しかし今回は鈴音にとってはただの誕生日のお祝いでは無い為、全部頑張って自分で準備をしたい気持ちがあり、気持ちだけ受け取って断る事にした。

場所がなかなかの山奥にある為、スーパーに行ってとんぼ返りするだけでも30分はかかる。
早くても1時間はかかるだろうと鈴音は予想して、あっくんとも連絡を取りながら準備を進める。
夕達は思いのほか材料集めに手こずり、というかグループでみんなが次々に欲しいものを追加で連絡する為、時間がかかっている様子。
一方で鈴音は順調に準備を進めて、30~40分ほどで準備を完了させてしまった。

皆の所に戻って残りを手伝おうかな〜と思った時に、先程おじさんから貰った手書きのマップが目に入る。

明るいうちに下見しとこっと。

連絡入れておいた方がいいだろうと、佳子に貰ったマップの写真と共にちょっとここ下見行ってくる!と連絡を入れてマップを見ながら森の中へと進んでいく。

看板?と言うか手作りの木の板でできた道標のようなものがあった為あまり迷う事無く5~10分ほどで到着する事が出来た。

まだ薄暗い程度だったが、目の前に広がる景色はとても綺麗だった。きっと夜になるともっと綺麗になって、星空も綺麗なんだろうなと、鈴音は今から楽しみになった。

後は帰るだけだ〜と、再び佳子に連絡を入れようと思って携帯を触るも、全く動かず、電源ボタンを何度も押していると出てきたのはバッテリーマーク。
充電もせずに音楽を流しながら準備をしていた自分を心の底から殴ってやりたい。

「え、まじ?」

思わず声が漏れる鈴音。
まぁ帰るだけだし、と周りを見渡すも先程から少ししか経っていないというのにもう既に暗くなっている。
街灯などある訳もなく、照らせるものが何も無い。
とりあえずまっすぐ歩くか。と思い進むものの、この道が正解なのかも分からず、足元も見えないこの状況が余計に鈴音の不安を煽る。

ガサガサっと物音が聞こえて鈴音の体がビクン!とビビり上がる。
下手に動き回るのはやめよう。
佳子に伝えているから帰りが遅ければおかしく思って様子を見に来てくれるはず。。。
そう信じて、鈴音は近くの木の傍に座り込んだ。

きっと、数分しか経っていないのであろう時間も不安と恐怖で押し潰されそうな鈴音には随分と長い時間に感じてしまう。

「あーあ。夕の誕生日になにやってんの私。はぁ。」

不安と心細さからポロポロと出てくる涙をメイクも気にせずにゴシゴシと拭う。

このまま誰も来てくれなかったら

あのマップから離れた所に来てしまっていたら

イノシシなどの凶暴な動物に出くわしてしまったら

心を落ち着けようとしてもどうして不安が頭から離れてくれない。

夕と泊まるはずだった部屋の鍵を見つめ、握りしめて必死に祈る。

お願いします。皆んなに見つけて貰えますように。

寒さに身を震わせながら、白い吐息で手先を温め暖を取る。寒い事には変わりがないのだが、何もしないよりはマシだと思い続けるうちに眠たくなってきて、段々と瞼があかなくなっていく。

ダメでしょ。こんなとこで寝ちゃ。え、これ寝たら死ぬ!とかそういうやつ、、、?

そんな鈴音の思いとは裏腹に瞼はどんどん重くなり、鈴音は眠りについてしまった。