幸せ絶頂の鈴音は、仕事納めも難なく終えて明日は待ちに待った夕の誕生日。

最後の仕事を終え、同僚達に恒例の年末挨拶を済ませてから家へと帰る。

家には昨日仕事納めを終えてゆっくりと休日を楽しんでいる夕がいた。
もうお風呂に入っていた様で、毛先が少し濡れて首にタオルをかけた状態で迎えられる。

「おかえり、お疲れ様」

ちゅっと頭にキスをされ、鈴音もそれを嬉しそうに受け入れる。

「ただいま!夕!明日はすっごいから!!楽しみにしててね!?!」

そう言うと、夕はふはっと柔らかく笑い

「うん、ありがとう。楽しみにしとく。」

と今度は唇にキスをされた。

鈴音はお風呂に入りながら入念に明日の段取りを頭の中でチェックする。

まずはこうして、あーして、うん、完璧だ。

湯船につかりながら、考えていた時にふと、自分の痣が目に入る。

今ではこれを見ても発作も起きなくなったなーと、ふふっと何故か笑ってしまう。
今でも自分にとって、この痣は嫌な思い出の詰まった、取り除けるものならば取り除きたい物には変わりはない。
でも夕がたくさんの愛情を注いでくれて、こんな身体の自分を見ても綺麗だと言ってくれた事で、鈴音の気持ちは後ろ向きで塞ぎ込んでいたあのころとは違い前に進んでいるのだ。
それに、今ではことある事に痣が気にならない程に夕にキスマークを付けられる為、別の意味で体を見られない。

なんにせよ、夕の存在は鈴音にとってこの1年程度で遥かに大きなものへと変わった。
もちろん、他の幼馴染み達もとても大事でなくてはならない存在なのだが、これからの一生を添い遂げると約束し、家族になる夕の存在は格段と大きなものとなっている。

まさか、自分があの過去を乗り越えられるとはな〜

と余韻に浸り、ご機嫌に鼻歌を歌っているとコンコンと、ノックをされる。
ドアの前には背の高い夕のシルエットが見える。

「どうしたの〜??」

そう返事をすると

「すずさんすずさん。そろそろ出てきてよ。せっかく仕事終わってゆっくり出来るのにひとり酒は味気ないなぁ〜」

そう言われてお風呂の時計を確認すると、もうはや1時間もお風呂に入っていた。
いつもの倍は入っていた事に驚き

「うわ!ほんとだ!すぐ出るねー!」

「わかった」

夕はそう返事をしたものの、ドアの前から動く気配が全くない。

「夕さん??リビングで待ってて欲しいんですが。。。」

「俺もうすぐ誕生日なのに〜?」

駄々っ子のような声でそう言われても、好き好んで好きな人に着替える所を見られたいのか、とこころのなかでツッコミを入れ

「まだ誕生日じゃないでしょ。」

とジトッとした声で言うと、夕はニヤっとしたのが分かるような声色で

「じゃあ誕生日ならいいんだ?」

鈴音の返事を聞く前にリビングの方へと歩いていってしまった。

やってしまった。。。

きっとこれは明日は一緒にお風呂に入ることになるだろう。と鈴音は頭を抱える。
もう何度も夕には裸を見られているので、痣を見られたくない。と言うよりも恥ずかしいのだ。
明るいお風呂の中で、2人。きっと夕の事だから鈴音の事をじーっと見るに違いない。
実際、何度かお風呂に一緒に入った時、夕は当たり前のように体を洗う鈴音を嬉しそうにじーっと見つめるか、洗ってあげるよ、なんて言ってお決まりのようにエッチな流れになったり。。。

はぁぁぁぁ。と深いため息をついて、体を拭いてスキンケアやボディクリームを塗る。