課長や部長にも婚約の話は回ってしまった様で、籍を入れてから報告しようと思っていた鈴音は報告を自分から出来なかったことを謝ると、優しくお祝いの言葉をくれ、改めてこの職場の人の良さに心が熱くなった。

定時の時間になり、デスクを片付けて帰ろうとするとガシッと腕を掴まれる。

「どこ行くつもりですか?志倉さん!!」

腕をつかんだのは百合ちゃんだったようで、にっこにこの笑顔で

「今日はお祝い会しますよ!!根掘り葉掘り聞かせて貰いますから!!」

と同じ営業のメンバー数人も引き連れて居酒屋へと連れていかれる。

行く途中に、夕に今日呑み会になったことを伝えると

"了解。迎え必要だったら連絡してね"

とすぐに返事が返ってきた。

「じゃあ!志倉さんの結婚を祝って〜〜?!?」

「「「「カンパーイ!!!」」」」

みんなで乾杯をすると、もう我慢出来ない!といった様子で百合ちゃんが口を開く!

「で!なんてプロポーズされたんですか?!まず相手はどんな人なんですか?!?入籍はいつ?!?!」

質問に答える前に次の質問がくるのに圧倒されていると、赤木さんが次はチョップを頭にお見舞いする。

「1つずつ聞けよ志倉困ってんだろ」

呆れたように笑いながら

「まぁでも志倉に男がいたとはなぁ〜」

赤木さんがそう言うと

「え!赤木さん気づいてなかったんですか?!私とか南川さんとかは気づいてましたよ!ね〜!!?」

と向かいに座る南川さんことあきちゃんと声を合わせる百合ちゃん!

「僕もいるんだろうな〜とは思ってました。赤木さん鈍感ですね。」

とあきちゃんの隣に座る高野君までもがそう言うので、鈴音も驚きが隠せない。

職場の子とは仲は良いものの恋愛の話をする事はあまりない為、彼氏が出来た事は誰にも言っていなかった。
と言うより呑みに行っても仕事の話をする事が殆どな為、伝える機会もなかったのだ。

「え!高野くんまで気づいてたの?!」

鈴音がそう言うと、赤木さん以外の3人は目を合わせて

「「「だって志倉さんわかりやすいですから」」」

と声を揃えて言われる。

「え!うそ!!ほんと!?!」

「はい!だって志倉さん、彼氏さんとデートの日は服装もスカートだったりヘアメも気合い入っててウキウキでちょーーー可愛いですから!!!」

「初めは何とも思わなかったですけど、そういう日は必ず定時で上がろうとしてたんで、いるんだろうな〜とは思ってました。」

と百合ちゃんや高野くんに言われそれにうんうんと頷くあきちゃんに、鈴音はそんなにも分かりやすかったのか、、と今更ながらに恥ずかしくなる。

「お前らよく見てんな〜」

赤木さんは驚きを超えて感心している。

「で!お相手とはどこで出会ったんですか??」

今度はあきちゃんが話を戻すように質問をされる。

「えっと、幼なじみなんだ〜、、へへ」

そう言うと、あきちゃんと百合ちゃんはきゃー!!っと声を上げて目を輝かせる。

「素敵!!!素敵です!!!」

その後も、プロポーズの事や馴れ初めなどそれはもう根掘り葉掘り聞かれ、最後には赤木さんまでノリノリで質問をしてきた為、お開きの頃には鈴音はぐったりだった。

でも、こんなにも自分の事で喜んでくれたり興味を持って聞いてくれる人が家族や幼なじみ以外でいる事に、それが仕事仲間な事が鈴音は嬉しくて幸せだった。

それぞれ帰り道が違う為、お店の前で別れて鈴音は電車に乗る為に駅の方へと向かう。
駅に着くと、夕に帰ることを伝えて電車が来るまでの間幸せを噛み締めていた。

自分が大好きな人も自分の事を好きでいてくれて、その人と結婚が出来るだけでも幸せなのに、会社の人までも自分の事のように喜んで祝ってくれる。

こんなにも幸せで良いのかと、涙が出てきそうになる。
そんな事を考えながら、到着した電車に乗っていると早く夕に会いたくなった。

最寄りの駅に着くと、鈴音は小走りで改札の方へと走っていく。

すると、改札の向こうには大好きな人が待っていた。
迎えに行くね、と電車に乗っている時に連絡が来てから鈴音は早く会いたくて会いたくてたまらなかった。

走ってくる鈴音を見つけて夕は、いつものように優しく微笑んで手を振ってくれる。

「どうしたの?そんなに急がなくて良かったのに。」

「早く、早く会いたかったの!!」

息を切らせながらそういう鈴音に、夕は心から嬉しそうに微笑み、鈴音の手を取る。

「じゃあ家ついたらずっと離れないでおこうね?」

ふふっと笑いながら、お互いの気持ちを確かめるようにしっかりと指を絡めて手を繋ぎ、今日の出来事を伝えながら家へと帰る2人。

夕は、嬉しそうに今日の出来事を話す鈴音を、うんうん、とそれはもう愛しそうに見つめながら話を聞いてくれ、鈴音はまた幸せで胸がいっぱいになった。