それからの毎日は幸せ過ぎるほど甘くて暖かい毎日だった。

もちろん生活していくうちにお互いの違った価値観はあるものの、なにせ鈴音に甘すぎる夕は全てにおいて"すずがそうするなら俺もそうするよ"となんの文句もなく鈴音に合わせてくれてしまうので、不満が募って喧嘩になる事はない。

まぁ、夕のお母さんが言っていたように朝はめっぽう弱く起こす時は一苦労するのだが。。。
その為基本、朝ごはんは鈴音が作って夕を起こす。

今日も、簡単なものではあるがパン派の夕に合わせてソーセージやスクランブルエッグ、コーヒーなどザ・朝ごはんと言ったものを食卓に並べて夕を起こしに向かう。

寝室の方へ向かうと、まだスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている夕。
その寝顔は何度見ても飽きることの無い天使のように可愛くてかっこいい。

日課のようにその顔を見つめ堪能した後、声をかける。

「夕〜??ご飯出来たよ~!!起きて〜〜!!」

すると、ん~と先程とは違って眉間に皺を寄せる。

「あとごふん、、、」

「ダメだよ!!遅刻しちゃうよ!?!」

夕の肩を揺らしていると、ガバっと布団に引き込まれる。

「じゃあすずもいっしょに~〜」

「こら!起きなさい!!」

必殺技!と言わんばかりに先程まで洗い物をして冷たい手を夕の首元に持っていくと、驚いたようにパチッと目を開き、不機嫌そうな顔をして鈴音の手首に噛み付いてきた。

もちろん手加減されているので痛くも何ともない。

「起きれたでしょ?」

ふふっと笑ってそう言うと、次は鈴音の唇に噛み付くようにキスをする。

「ちょ、、!!ほんとに、じかん!!」

夕は、携帯で時間を確かめて不服そうな顔をしてのそのそと布団からやっと動き出す。

しかし、"のそのそと"である。まだ頭は完璧に起きていない夕の行動はいつもよりも遥かにスピードダウンしている。

「先向こう行ってるね!」

まだ夢うつつな夕にそう伝えて、リビングに行き先に食事を始める。
夕よりも少し早く家を出る鈴音は、夕が来るのを待っていると遅れてしまう事が初日で判明し、次の日からは先に食べることにしたのだ。

半分ほど食べた後、仕事の服を着て寝癖も直され、目つきもキリッとしたものに変わった夕が現れる。

鈴音にとって、この夕のオンオフが堪らなくクる。
先程まで子供のようにしていた夕が、大人っぽく変わるこのギャップは何度見てもドキッとする。

「おはよう、今日もご飯ありがとね」

夕は毎朝必ずご飯を作った鈴音に対して感謝の言葉を伝えてくれる。

夕のこういった、少しの事でもきちんと言葉にして感謝の気持ちだったりをストレートに伝えてくれる所が鈴音を喜ばせてくれるし、自分もきちんと伝えていこうと成長させてくれた。

今日も美味しい、と全て残すことなく食べてくれたのを見届けて鈴音は会社に向かうために玄関に。

「じゃあ行ってきます!」

「行ってらっしゃい、気をつけてね」

ちゅっと触れるだけのキスをして玄関を出る。
同棲を始めてから、決まり事になった行ってきますとただいまのキス。
ベタだな~と思いながらも幸せで堪らない。

そのおかげか最近では、仕事の調子も良くやる気がみなぎっている。
会社の皆にも、幸せオーラ全開だな〜!とからかわれる程だ。