寝てばかりで何も食べていなかった事を思い出させるように2人のお腹が大合唱を初めた為、軽く着替えて外に食べに行くことになった。

夕の服を借りて、帽子を被ってマスクを装着!
すっぴんを隠す為に夕の家にある使えるものは全て装着した。
必死になってすっぴんを出来るだけ隠そうとしている鈴音に

「可愛いのになんで隠すの?」

と本当に心の底から不思議そうな顔をして聞いてくる夕に対して

「夕は絶対変なフィルターかかってるから!!普通私みたいなアラサーのすっぴんとか見てられないから!!!!!!」

と逆ギレをしながら答えるも、クスクスと笑いながらそれさえも愛しいと言わんばかりの視線を向けてくる。

夕は告白以降、たがが外れたかのように視線や体の隅々から鈴音への気持ちをだだ漏れにさせており、鈴音自身もそれに溺れてしまいそうになっている。
溺れてしまえば楽なのだろうが、まだ少し不安な気持ちや恥ずかしい気持ちが邪魔をしてなかなか素直になれないでいる。

「ん、じゃあ行こっか」

準備が出来た鈴音に当たり前のように手を差し出す夕。
その意図は分かりきっている。
が、しかしだ、夕とは違い鈴音は昨日の今日で幼なじみから恋人になったことにまだ慣れきっていない。
もちろん、夕の事は恋愛として好きな事は自覚しているものの、幼なじみとして認識していた期間が長いのでどうしても違和感、というか恥ずかしい気持ちが拭えない。

とはいっても繋がない、なんて夕が許すはずもないので待ちかねた夕が鈴音の手を取り出発する。

「家の近くだとモクドしかないけどモクドでいい?」

「うん!モクド大好き!!」

あっという間に行先は決まり2人で有名なファーストフード店に向かうことに。
途中、"寒いね"なんて言って夕が繋いだ手を夕のダウンのポケットに入れたことで一気に2人の距離が近くなり、鈴音は柄にもなく緊張して心臓がうるさく、寒いはずが何故か暑くなっていた。

そんなこんなで、店についてハンバーガーとポテトのセットを注文し席に着く。
お昼時とあってか、店はだいぶ混んでいて席まで持ってきてくれるとの事なので2人で座ってたわいもない話をしていると

「あれ??ゆーくんじゃない??うっそ〜!!!!!大学卒業ぶりぃ〜??」

一見派手なように見えるも、どこか上品さもあるとても綺麗な女性が夕に話しかけてきて、少し身構える鈴音。大学は夕とは違うところに行った為、どんな生活を送っていたのかあまり知らないのだ。
彼女との関係が気になり、ちらっと夕の方へと視線を移す。
しかし、夕はと言うと顔色1つ変えずに、と言うか聞こえていないかのように鈴音の手を触りながら話しかける。

「すず、今日の夜篤人達がご飯行こってグループで言ってるけどどうする??」

これには流石の鈴音も驚き、彼女が可哀想になる。

「ちょっと!無視しないでよ!また大学の時みたいに誘っていい?こんな女より絶対満足させてあげるよ?」

すると、夕の目が初めてその女性を捉える。

「こんな女?誰が?てか、誰?」