ショッピングモールについて、目的の映画館へと向かう。

「まだ席あるかな〜?」

「チケット取ってるから平気」

!?

「え!お金!!」

そう言って財布を取り出そうと手を離すと、再び夕に手を繋がれる。

「手、離しちゃだめ」

そう言うと、ひょいっと鈴音からカバンを奪ってしまい、お金を渡す事は叶わなかった。

映画はそれはもう最高で、最後はボロボロと泣いてしまった。
夕はというと、開始10分程ですやすやと眠っており、夕らしいなーと思いながらも付き合わせて申し訳ない気持ちにもなった。
その後、ショッピングモールの中をブラブラとして楽しい時間を過ごした。

今までも、何度も2人で買い物なんてしていたはずなのに歩いている時は必ず繋がれる手や、鈴音のペースに合わせ、たまに夕の方を見ると必ず優しそうにこちらを見ている夕になんだかこそばゆいような、恥ずかしいような気持ちでいっぱいになった。

あっという間にマンションの前に着き、なんだか名残惜しい気持ちになる。

「今日はありがとうね!楽しかった!」

そう言うと、少し照れたように頬を掻いて

「ん。」

とだけ返事をする夕。

「じゃあ、またね!」

マンションに入ろうとすると、くいっと服を掴まれ、何かと振り返ると

「また、誘うから」

それだけ言うと、夕はスタスタと帰ってしまった。

その姿が昔の夕と少し重なり、懐かしい気持ちを覚えながらマンションへと鈴音も戻る。

「はぁ〜!!たっのしかった〜!!」

ベッドに顔を突っ伏して沢山歩き疲れ果てた体を労るように脱力するとあっという間に眠ってしまった。


それから2ヶ月程が過ぎ、夕とはたまに出掛けたり、電話をしたりで今までと同じようで少し違う時を過ごし、鈴音の中で"夕"と言う人物の存在がただの幼馴染みとは違う存在に変わりはじめていた。

連絡がくると嬉しくて、電話がくると少し緊張する。会うと心地よくて落ち着くようで落ち着かない。

あの日以来、夕は手を繋いだりする事はあってもハグやキスなどは全くしてこない。

"してくれても、いいのにな、、、"

そう思った時に、自分の気持ちに初めて気づく。

"そうか、私夕の事、好きなのか"

それに気づいた時、早く夕に会いたくなった。
会って、力いっぱい抱きしめたい。

そう思って、夕にLIMEを送ってみるも今は新作のゲーム制作の大詰めらしく、もうしばらくは会えないとの返事がきて、肩を落とす。

すると、携帯が何かを受信して小さく震えた。
夕かな?!と画面を確認すると

"すず!明日女子会するから!"

と沙奈からの連絡で、夕からではないことに少し落ち込むものの、沙奈達に会えることが嬉しくて自然と顔が笑顔になる。

"了解!" と返事をして残りの仕事を片付ける。