「ところで…」
ルイーズはふとアリスの髪を見上げて、髪飾りに目を留めた。
「あなたのその飾り、クロードからプレゼントされたの?」
それは大きなサファイアの付いた、宝石加工で有名な貿易相手から買った一点物だ。

もちろんクロードからもらった物ではない。
「これは…、自分で購入しました」
「そう…」
ルイーズはにわかに口角を上げ、自分の髪に手をやった。

「まぁ、クロードに宝石を見る目なんてないものね。だって見てよ。これね、クロードに買ってもらったのよ。ほら、離宮にいた時に私に似合うからって贈ってくれたんだけど、これなんてガラス玉よね。でも色や形のセンスはいいから使ってあげてるの。それにしても自分の瞳の色を私に付けさせるなんて、クロードったら、何考えてるのかしらね。ホント笑っちゃう。それからね、王都に帰ったら寒いからって言ってショールも贈ってくれたの。安物だったけど、結構温かかったわ」

ルイーズが延々と語る中、アリスはただ黙って聞いていた。
ゾフィーがなんとかルイーズの話をやめさせようと何度も口を挟んでいたが、ルイーズはとうとう言いたいことを全て言い切ったようだ。
晴れ晴れとした顔でルイーズが引き上げて行くと、ゾフィーは心配そうにアリスに声をかけた。
「今日は本当にごめんなさいねアリス。ルイーズの言っていたことは気にしないで。あんなこと、全部嘘に決まっているから」

嘘…、なのかな?とアリスは思う。
アリスはクロードから装飾品などもらったことがない。
あんな、女慣れしていないような人だから当然のように思っていたけど、実は、ルイーズ王女には贈っていたのだとしたら…。