ラウルが去った後、クロードは酷い後悔に押しつぶされそうになっていた。
今までアリスが何度も襲われていたという事実は、何も知らずに平和ぼけしていたクロードを打ちのめした。
この半年の間にも、アリスがそんな目に遭った日があったのかもしれない。
そういえば、子犬のタロを拾ったあの日も、アリスとオペラに出かけたあの日も、護衛の数が多めだとは感じていた。
だが、伯爵家の当主ともなればこのくらい護衛が必要なのだろうと特に疑問にも思わなかった。
今思えば、とんだマヌケな話だ。
あのデート中も二人きりのつもりだったが、おそらく博物館にも劇場にも護衛が潜んでいたに違いない。
王族の護衛騎士である自分がそんなことにも気付かないなんて、いくら舞い上がっていたとは言えお笑い種だ。

それに…。
自分は今回二日間の休みを取ってアリスに会いに行くつもりだった。
もしあの時王女の制止を押し切って会いに行けていたら、彼女の遭難に立ち会えたかもしれない。
いや、立ち会えなかったとしても、クロードと会うことで予定がズレ、襲われることを回避できたかもしれないのだ。

(いや…。俺は王女の護衛騎士だ。王女の制止を振り払うなんて出来るわけがない。…こんな近くにいたのに、顔を見ることも出来ないなんて…)
クロードは俯き、唇を噛んだ。
しかし今回のことで、クロードはあらためて思い知ったことがある。
アリスと自分では、背負うものがこれほど違うのだということを。