二日間自室でゴロゴロしていたクロードは、三日目には普通に王女の護衛に戻った。
結局アリスには会いに行けず仕舞いで、今となってはあの浮かれていた日々がバカみたいだ。
王女に対して色々思うところはあるがそれでも勤務に手を抜くことはなく、クロードはルイーズ王女の側に侍り続けた。

勤務に戻った翌日、離宮にクロードを訪ねて来た者があった。
アリスの秘書を務めている、ラウルという男だ。
アリスは昨日王都へ向けて出発したのだが、ラウルはアリスに使いを頼まれ、帰京を遅らせたのだと言う。

ラウルは長年アリスの側にいる、彼女が重宝している者だ。
気さくに語り合う二人を何度かクロードは目にしている。
普段のアリスの様子から、彼を心から信頼しているのだとわかるのだ。
ラウルは既婚者だと聞いているが、まだ若くなかなか見目も良いラウルに、クロードは嫉妬に似た感情を抱いていた。

訪問してきたラウルは、アリスからの差し入れだと言ってサンフォース領で獲れた海産物を渡してきた。
「それからこれは、奥様から旦那様へのお誕生日プレゼントだそうです」
そう言ってラウルが差し出したのは、わりと大きめの箱だった。
「私に?」
「ええ、旦那様はもうすぐ二十歳のお誕生日を迎えられるそうですね。一緒にお祝いは出来ないので、せめてプレゼントを届けて欲しいと頼まれまして」

たしかにクロードはこの離宮滞在中に二十歳になる。
「私の誕生日を知ってくれていたのか…」
箱を開けてみると、中から出てきたのは革製の外套だった。
「サンフォース領で獲れる海獣から作った一点物です。風を通さず、温かいですよ」
「そうか…。大事にすると伝えてくれ」