ルイーズ王女の離宮行きについて来たクロードは、思っていた通り毎日王女に振り回されていた。
離宮に来ても交代勤務のはずが、王女が眠っている間以外はほぼ側近くに侍らされる。
同僚たちももう嫉妬というより、クロードを気の毒な目で見るようになっていた。

ある日ルイーズは思いつきで近くの町に出かけると言い出した。
服や宝飾品の店が見たいと言うのだ。
警備が大変なため店員を離宮に呼ぶよう勧めたが、ルイーズ王女は言い出したら聞かない人間だ。
仕方なくお忍びで店を二軒だけに絞って行くことになったのだが、王女は何を思ったか、下級貴族のカップルに見えるような揃いの服を自分とクロードに着せて出かけた。
クロードは抵抗したが、同僚たちからは『王女様の初恋の思い出だと思って合わせてやれ』と言われ、仕方なくデートの真似事をすることになったのだ。
王女は馬車ではクロードを隣に座らせ、店の中でも手を繋いだり腕を組んだりして歩いた。

宝飾品の店に入った時、クロードはある髪飾りに目を留めた。
小さな藍色の石が付いて細工も美しいそれは、思ったほど金額も高くなく、クロードの手持ちの金でも十分に手が届きそうだ。
(アリスに似合いそうだな…)
普段のアリスはあまり装飾品を付けていないし、どうやら高級品にこだわる人でもなさそうだ。
藍色はクロードの瞳の色でもある。
今まで贈り物などしたことがなかったが、手紙と一緒にこれを送ったら、彼女はどんな反応をしてくれるだろうか。