「…ルイーズ、貴女の護衛騎士クロードは、アリスの旦那様なのよ?」
王太子妃が嗜めるようにルイーズに告げると、彼女は目を大きく見開いた。
「クロードの…、奥様…?」
「…ご挨拶が遅れて申し訳ありません、王女殿下。主人が、大変お世話になっております」
「そう、貴女が…」
ルイーズはサッと踵を返すと、
「クロード、行くわよ」
と声をかけた。
「はい、王女殿下。では失礼致します、王太子妃殿下」
「待ってクロード。今日の勤務はいつまでなの?」
王太子妃に呼び止められ、ルイーズに続こうとしていたクロードはそのまま立ち止まった。
「王女殿下をお部屋にお送りしたら夕勤の者と交替致します」
「まぁ。ではそれまでにアリスを解放しますから、一緒にお帰りなさいな」
「え⁈」
「は⁈」
二人の声が同時に重なる。
お互いの顔を見合わせれば、同じように目を丸くしている。

「お義姉様、クロードは私の騎士ですのよ。勝手なことをなさらないでくださいませ」
行きかけたルイーズが戻ってきて、王太子妃に文句を言った。
「あらどうして?いくら貴女の騎士だからって、勤務を終えた者を拘束してはダメよ?」
王宮所属の騎士の勤めは意外とホワイトなのだ。
きちんと交替勤務になっているし、時間外も滅多にさせないようにしている。
命をかける仕事であり体が資本の職務だから、ちゃんと休むことも仕事のうちなのだ。
「…わかっていますわ」
ルイーズは頬をぷうっと膨らませると、今度こそ踵を返して行ってしまった。
その後ろを、クロードたちが慌ててついて行く。