(団長にも、自分の口から報告しなくては)
そう考えるとまた憂鬱になった。
花婿が差し替えられた時点で、近衛騎士団の団長にはすぐに文を送っていた。
クロード個人の問題ではなく侯爵家の問題であるため、団長からはすぐに了承の文が届いている。
結婚による7日間の休暇と、報告は後で良いこと、そして今後の身の振り方の話も後日でよいと書いてあった。
7日間も休むつもりはないが、数日休めるのは正直助かった。
とにかくバタバタと決まってしまったので落ち着いてこれからのことを考えたいし、また、突然結婚したことについて騎士団の上司や同僚に突っ込まれるのも気が重い。
結局いずれは突っ込まれるのだろうが、なるべく避けたいし心の準備がしたいと思う。

クロードはあれこれ考えながら身仕度を終えると、マルセルという初老の家令に案内されてダイニングへ向かった。
テーブルの上には一人分だけの朝食の用意がしてある。
「その…、アリス嬢の分は?」
「奥様はすでに朝食をとられ、執務室で朝の報告を受けております」
「そうか、もう…。その、彼女もここで食べたのか?」
「はい。アリスお嬢…、いえ、奥様はいつも決まった時間にここでお召し上がりになります」
「そうか」
クロードは席に着くと、向かい側の、何もないテーブルの上を見つめた。
そして、寝坊した自分を少しだけ後悔した。
いや、正直、彼女と顔を合わせなくて済んだことにはホッとしている。
昨日彼女にあんな顔をさせてしまい、今日どんな顔で会えば良いのかわからなかったから。
だが、この朝食の席は昨夜の失言を謝罪する良い機会だったのに。