晴れ渡る青空の中、教会の鐘の音が響き渡る。
サンフォース領の中心に建立された荘厳な教会で、今、結婚式が終わったのだ。
並んで教会から出て来た見目麗しいカップルに、見学者たちは熱狂し、祝福の声をあげる。

花嫁は女性ながら伯爵位を継いでいるサンフォース伯爵アリス、二十三歳。
幼い頃から神童の誉れ高く、現在も才色兼備で名高い淑女である。
爵位を継いで日が浅いにも関わらず、すでに事業運営、領地経営にも才を遺憾無く発揮している彼女は、領民を愛し、領地を愛し、伯爵家を愛し…、そして何より、夫を愛している。

一方花婿は、サンフォース伯爵の夫で近衛騎士団所属のクロード、二十歳。
彼は少し前までルイーズ王女の護衛騎士を勤めていたが、王女が北の離宮に移るのと同時に近衛騎士団に戻された。
現在は騎士の任務に就きながら、妻の家業も手伝っているようだ。
妻を見つめる彼の蕩けるような目を見ればわかるように、彼もまた、妻をこの上なく愛している。