「離縁…、申請?」
ポツリとクロードがこぼした言葉に、アリスはギョッとして、慌てて立ち上がった。
そしてつかつかと机に向かって歩いて行くと、ガバッと封筒を手に取った。

「アリス、それは何ですか?」
「な、なんでもないわ。手紙の書き損じよ」
「じゃあ見せてください」
「だから、これは書き損じで…」
「なら別に、見せたって構わないでしょう?」
「……っ」
封筒を後手に黙ってしまったアリスに、クロードは近づいた。
「…アリス…」
耳元で囁くと、フッとアリスの肩から力が抜ける。
「あ……っ!」
力の抜けたアリスから封筒を取り上げるのは簡単だった。

「離縁申請って…?どういうことですか?」
サッと封筒の表書きと中身に目を走らせたクロードは、怒ったような顔でアリスを見つめた。
話し方もだいぶくだけていたはずなのに、再び敬語に戻っている。
どうやらクロードは、怒ると敬語になるらしい。
そんなおかしな考えに現実逃避していたアリスの頬を、クロードが両手で挟み込んだ。
「こっちを見てアリス。ちゃんと答えてください」
アリスの肩がピクリと震える。
「アリスは俺と離縁したいんですか?じゃあさっき好きって言ってくれたのは嘘ですか?」
「ち、違うの。それは、ずいぶん前に取り寄せたもので…」
焦って否定しようとするアリスを、クロードは冷ややかに見据えた。