クロードは眉尻を下げると、怪我をしていない方の腕でアリスの頭をそっと引き寄せた。
「…ごめんなさい、旦那様。怪我がなければ優勝できたのに…。ごめんなさい…」
「いや、ミハエルは強いから実力で優勝したんですよ。それに、来年は絶対に俺が優勝するから。だいたい何度も言っているけど、貴女のせいじゃないでしょう?貴女だって被害者なんだから」
「でも、あの時私があんなところから落ちなければ…」
「俺は嬉しかったですよ。貴女を受け止められたのが俺で」
アリスの頭の上に乗せられていたクロードの手が、優しく彼女の髪を撫でた。

(甘い…!砂を吐きそうだ!)
扉の外で入ろうかどうしようか躊躇していたフェリシーは、とうとうドアノブから手を外した。
ここは、アリスの部屋の前だ。
寝る前にクロードの腕の手当てをし直すとアリスが言うからフェリシーは簡易な医療用具を持って来たのだが、とにかく先ほどから入るに入れないのだ。
だって今入って行ったら、馬に蹴られて死んでしまう状況だ。
(今日は戻ろう。頑張って、お嬢様)
結局、フェリシーは箱だけ扉の前に置いて戻って行った。