「旦那様は馬鹿なんですか⁈こんな体で!」
クロードの変色した手首を見たアリスはわんわん泣き出した。
泣くやら怒るやら、本当に忙しい。
しかもこの怪我は、例の事件の折に落ちてきたアリスを受け止めた時に負ったものと知り、余計に涙が止まらなくなったのだ。

「だから言いたくなかったんだ…。貴女が気にするから…」
「当たり前でしょう⁈だってこんな腕で!私のせいで!」
「…見た目ほどは痛くないんですよ。だから試合だって出場したんだし」
「嘘ばっかり!」
アリスが変色した部分をペチンと叩くと、クロードは「痛てっ」と声を上げた。

「だって私、貴方の怪我なんて全然気がつかなくて…」
あの事件の後食事やお茶の時間で一緒に過ごすことも多かったが、クロードは手を庇うような姿を全く見せなかった。
「だから、それはバレないようにしてたから」
「そんな…、だって…。う…っ、ひっく…っ」
アリスがまたしゃくりあげて泣いている。
「頼むからもう泣かないでください。俺は貴女の涙を見る方が胸が痛いんだ」