手を挙げて歓呼に応えていたミハエルだが、やがて手を下ろすと、ふいにクロードの右腕を掴んだ。
「う…っ」
クロードが低く唸ると、ミハエルは彼の腕を掴んだまま、肘から下の装備を外した。
「ミハエル、何をする」
「俺がわからないとでも思ったのか?」
クロードの右腕は、手首の辺りが青黒く変色していた。
もちろん、今の試合で打たれたせいではない。
「おまえ、これでよくここまで勝ち残ってきたな」
「うるさい、離せ」
「陛下には報告するからな。おまえが怪我してたって」
「余計なことするな。こんなことは関係なく優勝したのはおまえだ」
「これは、俺のプライドの問題だ。まぁ、ありがたく褒美は頂戴するけど」
ミハエルはヘラヘラ笑うと、恋人の待つ観覧席の方へ馬を向けた。
今回優勝したら恋人にプロポーズし、報奨金で結婚式を挙げると話していたのだ。

クロードはミハエルの後ろ姿を見送ると自分も観覧席に馬を向けた。
歩み寄るクロードの目に映ってきたのは、大きな瞳いっぱいに涙を溜めた愛妻の姿だった。