部屋に押し込められたアリスは、目を凝らして周囲を見渡した。
最初真っ暗かと思われた部屋の中だったが、目が慣れて来ると薄ぼんやりと見えるようになってきたのだ。
応接セットやベッドがあり、ここが誰かの寝室なのだとわかる。
ずっと使われていないようだが、時々掃除されているのか、埃がたまっているようなことはない。
(側室の部屋…、ってところかしら)
ここが後宮の一室なら、おそらく先王の側室の一人が使っていた部屋なのだろう。

壁伝いに扉の反対側に回って重い緞帳を開けると、窓から一気に光が差し込んできた。
窓を開けて眩しさに顔を背けると、さっき素通りしてきたベッドが何やらこんもりと盛り上がって見える。
(え⁈何⁈何かいる⁈)
さすがのアリスも震え上がり、大きく飛び退いた。
盛り上がり方から、何かがベッドに横になっているのがわかる。
シーツの先から足先のようなものが見えて、どうやら人間らしいということも予想できた。