「ちょっとお待ちくださいお嬢様!離縁するってどういうことですか⁈」
「だから、そのままの意味よ、フェリシー。二年間で終わらせようと思っていたものを、一年で終わらせることにしたの」
「だから、どうして…」
フェリシーをはじめアリスに近しい者たちは、皆主人夫婦が二年間の結婚生活の後離縁するつもりだと聞いてはいた。
しかし最近の二人の様子を見て、離縁の話は無くなるだろうというのが大方の予想だった。
なのに、何故ここに来てまた離縁の話が出るのだろう。

「お嬢様、そのお話、旦那様はご存知なのですか?勝手に動かれては旦那様が悲しまれますよ」
「いいえ、あの方はきっと悲しまないわ。予定より早く自由になって、かえって喜ばれるはずよ」
「いいえ、絶対に悲しまれます。旦那様はお嬢様が思われているより、ずっとお嬢様を大事に思われていますよ」
フェリシーは、最近のクロードの目を良く知っている。
多分アリスは恥ずかしがって彼の目を直視していないから知らないのだろうが、彼の目がどれほどアリスを愛おしそうに見ているか、フェリシーは知っているのだ。

「それに『白い結婚』だなんて、それを証明するために何をされるか、お嬢様はご存知なのですか?」
「もちろん…、わかってるわ」
『白い結婚』の証明…、要するに、アリスの純潔を証明するのだ。
そのために体を調べられるのだろうし、それが証明されれば、貴族の夫人としてこれほど屈辱的なことはない。