(やっぱり、このままじゃダメだわ)
アリスは突然立ち上がると、外出の準備を始めた。
今日はもう一日中家にいると聞いていたフェリシーは、その主人の行動に目を丸くした。
「どちらに行かれるんですか?お嬢様」
「今から教会に行くわ」
「…え?教会?寄付のお話なら先日行ってきたばかりですが…」
「違うわ。教会に行って離縁申請に必要な書類をもらってくるのよ。結婚してもうすぐ一年経つし、そうしたら『白い結婚』も成り立つと思うの」
「………は?たしか旦那様が隣国に行かれるまでは結婚生活を継続なさるおつもりだったのでは?」
「そう思っていたけど、やっぱりもう離縁したいわ。私、この生活にあと一年も耐えられないもの」
「………」

アリスの言っている意味がわからなすぎて、フェリシーはぽかんと口を開けたまま固まった。
その間もアリスはパタパタと外出の準備をしている。
そう、フェリシーの主人はこういう人なのだ。
思い立ったら、すぐに行動に移す。
侍女の助けも借りず髪をすき化粧をしているアリスを呆然と見ていたフェリシーであったが、主人が外出用のドレスに着替えようとしていたところでようやく我に返った。