晴れ渡る青空の中、教会の鐘の音が響き渡る。
王都の中心に建立されて三百年は経つであろう荘厳な教会で、今、結婚式が終わったのだ。
並んで教会から出て来た見目麗しいカップルに、見学者たちは熱狂し、祝福の声をあげる。

花嫁はサンフォース伯爵家のひとり娘で才媛の呼び声高いアリス嬢、二十二歳。
幼い頃から神童の誉れ高く、十五歳の時にはすでにサンフォース家の事業運営、領地経営に参加していたという令嬢だ。
彼女は領民を愛し、領地を愛し、伯爵家を愛していた。
やり手だった祖父の代で大きくなったサンフォース伯爵家の事業を父伯爵がさらに大きくし、さらに繁栄の立役者となったのがアリスである。
それ故父は伯爵家後継に養子をとらず、ひとり娘のアリスを女伯爵として立てることを決心したのだ。

と、ここまで聞けば頭でっかちで激烈な女性を想像されるだろうが、彼女は決してそのような女性ではない。
むしろ外見は清楚で可愛らしく、しかも朗らかであった。
緩くウェーブしたプラチナブロンドの髪をなびかせ、ぱっちりとした美しい碧眼でじっと見られれば、たいていの紳士は頬を赤く染めたものだ。
今教会から出てきた花嫁姿の彼女もまた美しく、一目花嫁を見ようとつめかけた市民は皆アリス嬢に見惚れるばかりであった。