掴み所がない子だ。

フワフワしていて、透き通っている。

まるで雲みたいな。


「手首、腫れてるけど。手首捻挫したの?」

「ああ、うん」

「そっか」


慣れた手つきで手首に湿布を貼ってくれる。

もしかしたら、先生のいない時に手当してるのかもしれない。

勝手に。


「私が貼ればすぐ治るよ。多分」

「多分か」

「うん。多分」


面白い子だ。


「俺、2年の湯島凜袮。君は?」

「小石川沙羅。2年生」

「同級生なんだね、よく保健室いるの?」

「貧血酷くてよくここで休んでる」

「そうなんだ」


一言、言うかどうか迷った。

でも、言わなきゃ始まらない。


「また、会いに来ていい?」

「絶対いるとは限らないけどね、寝てるかもだし。でもいいよ」

「分かった」


一目惚れってやつだった。