「…たに、きょうの海岸…?」
分からない、と言った表情をしている。
「おじさんがまだ生きてる時、家族でよく行ってたんでしょ?綺咲、今もたまに行きたくなるって言ってた!」
「ああ、あそこか…」
谷橋の海岸って名前だったこと知らなかったみたい。
ここから車で1時間ほどの距離にあって、電車で行くこともできる郊外にある海岸へ樹と向かった
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「あ!あれ、綺咲じゃない!?」
華奢な背中、サラサラと靡く長い黒髪
「ほんとだ」
ニットにカーディガンを羽織っただけの状態で、寒そうに身を縮めていた。
「私、行ってくる!」
急いで車から降りて、綺咲の元へと駆け出す。
海辺は凍るような冷たい潮風が吹き荒れる。



