「塾から来てないって連絡があったのよ。」
連絡もつかなくて、ってあかぎれした手でスマホをずっと握っている。
もう22時半、中学2年生の女の子が一人でいるかもなんて危なすぎる…
「今、はなママと楓くんに探してもらってるの」
その言葉に、自分の家を見ると車がないことに気づく。
そっか、二人とももう探しに行ってるんだ。
「樹は?何か知らないの?」
樹の家にいる可能性だってあるよね?
「樹も知らないっていうのよ。」
確かに、映画の宣伝ラッシュがやっと終わって、年末の特番や歌番組に向けて大忙しの樹に綺咲が頼るとも思えない。
そんなことを考えていると、家の前に止まった一台の黒い車。
樹の車だ。
樹はすぐに車から降りてきて、
「母さん」
「樹、どうしよっ、お母さんがこんなんだからっ、」
今にも崩れ落ちそうな危うい足取りで、樹につかまる樹ママ。



