12月も下旬、クリスマスも終わって、いよいよ年末に向けて世間が忙しくなる頃。
バイトが終わって、悴んだ手に息をかけながら家まで歩いていたときだった。
山川家の玄関ドアの前で、立ってる樹ママの姿。
さすが国宝級イケメンをこの世に生み出しただけあって、とても綺麗な美魔女さん。
でも、いつもとは様子が違う。
「おばさん、こんばんは。」
こんな時間に寒空の下、何してるんだろう。
「あ、はなちゃんっ、」
今にも泣き出しそうな顔をして、駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
その唯ならぬ雰囲気に息を呑む。
「綺咲の居場所って知らないわよね?」
「うん、知らない…今日って塾じゃないの?」
確か、水曜日と金曜日の夜は塾だって言ってたような気がするけど。



