樹side


「はなは大事な幼馴染だよ。」


そう言って、はなに背を向けて引っ越しの作業の続きへと取り組む


はなは、一言で言うと悪魔だ。


こっちが必死に気持ちを隠そうとしてるのに、簡単にはそうはさせてくれない。



キラキラした宝石みたいな瞳に何度吸い込まれそうになったことか。


彼女なんて、こんな可愛い幼馴染がいればできるわけない。


それをあんな純粋な顔をして聞いてくるもんだから、ムカついた。


お前のせいだよ、って。


他の女なんて眼中に入ったことはない。


芸能界に入って綺麗な人はたくさん見てきたけど、どうしたってはなが一番だ。


おっちょこちょいなところも、鈍感なところも、触ると柔らかいほっぺたも。


正直引っ越しだってこの大きくなる気持ちを隠して、はなとの距離を取るため。


でも中途半端な俺は、マネージャーにもっと事務所に近い場所を勧められたけど、結局実家の近くのマンションに決めた。


それもこれも、はなと離れることが怖くなったから。近すぎると困るけど、離れることもできない。矛盾だらけ。