私、最低なことしようとしてたんだよ?



アイドルである樹に、好きな人がいる樹に


「いいよ」



掠れた声、危うく捉えられる視線


樹の表情は至って本気だった



「何言ってるの、」



「ほら、キスして」



そんな衝撃的な発言を意図も簡単に言う。


どういう意味か分かってるの?


ベットに横たわったままの樹の腕が伸びてきて、私の手首を掴む。



「い、樹っ」




「ん?」



妖艶に見上げられる視線に、熱が上がるのが分かった。


私もだけど、樹も相当おかしいよっ



「離してっ」


「なんで?」



なんでって…



どうしてそんなに優しく微笑むの?



私の気持ちは迷惑になるでしょ?



身体でも頭でもなく、心が苦しくなるの。



困らせないでよ。



「はな?」



優しいその声に、もう目も合わせられない。


苦しいよ。



こんなにも好きなんだもん。




こんなにも胸が高鳴ってしまうんだもん。