案の定震えすぎて、落としてしまった10円玉
ちゃりんちゃりん、と呆気ない音が響く
「あっ、ごめっ、…す、すみません!」
無理だよこんなの!!
平常心でいられるわけがない!
机の下に落ちた小銭を拾おうと、しゃがみ込むと、同じくしゃがみ込んだ樹が目の前にいた。
交わる視線
あまりにも妖艶に笑うもんだから、息をするのも忘れてしまいそう
「樹っ、」
ここだけ、二人の世界みたい
みんなのことは足元しか見えない
どうしても鼓動が速くなる
「ふはっ、焦りすぎ」
ストレートに私を見つめて、満足そうにくしゃっと笑う樹
いつも通りの、二人でいる時の笑顔
なっ、なにこれ
胸が苦しい!
「ちゃんとしろよ」
意地悪に呟いて、何故かお釣りを拾わずに立ち上がった樹
私も急いで10円玉を拾って、立ち上がる
「どっ、どうぞ」
「さんきゅ」
いつも通りの言い方で、私の手を軽く握ってお釣りを受け取る樹
上がる黄色い歓声
「っ〜!」
ふぁ!?何してるの!?みんな見てるのに!



