その瞬間、
「はな…ちゃん?」
その声に時が止まったような気がした。
ハッと振り返ると
「め、芽吹先輩…っ」
別れたはずの芽吹先輩が、驚いた表情で私たちを交互に見ていた。
「…え、山川樹…?え、本人?え?」
絞り出したようなか細い声
今日に限って変装をしていない樹の姿に、本人じゃないと誤魔化すことは不可能
どうしようっ!頭をフル回転させて言い訳を考える
「えっと…………び、びっくりですよね!偶然遭遇したので、今ファンですって伝えてたところなんです!」
芽吹先輩は私が樹のファンだと思ってるから、遭遇したって思わせればどうにか!
あとは樹がこの話に乗ってくれさえすれば、乗り切れるかも。
ちらっと樹をアイコンタクトを図るけど、一度も目は合わない。
我ながら機転の利いた言い訳だと思うけど



