その背中を押してを眺めて、家の方へ振り返ると、見覚えのある姿に息が止まる
「はな」
その低い声は私の耳に届いた
「…樹っ、な、なんでここに」
よりによってこんな時に、変装もしないで私の家の前に立っている樹
そのオーラは何故か怒りに満ちていた
そんな姿でさえ、容易に胸が弾んでしまうから恋って怖い
「なんで俺の連絡は無視すんの?」
「それは、忘れてただけ…」
蘭さんと楽しそうに笑い合う姿がフラッシュバックして、苦しい
でも私にはヤキモチをやく資格はある?
「はなは嘘をつく時耳たぶをいつも触る。」
はっ、と耳たぶから手を離す
「っ、」
昔からこうやって全部バレる
鋭い視線から逃げるように、俯けば歩道に散らばっている桜の花びらたち
「芽吹先輩だっけ?そいつといて楽しかった?」
一歩近づいてくる足音
「……」
「もしかして告白でもされた?」
「なっ、」
的を得た掠れたその声に思わず顔を上げると、揺れる大きな瞳が目の前にあった



