「男を家にあげるとか、危機感どうなってんだよ」
低い声が鼓膜を震わす。
お母さんだって、楓だって家にいるし、二人きりだったわけじゃないのに。
「でも…樹だってうちに来てるんじゃん」
何が違うの?
それに今日は緊急だったんだよ。
「俺とあいつ同じレベルってこと?」
「っ、何、その言い方…」
樹の言葉に、胸の奥から込み上げてくる何か。
「必修だし、教えてもらえたら樹も単位取れるかもって頑張ってただけなのに…」
なんで、そんな酷い言い方出来るの?
私はただ、いつも助けてもらってるから、もっと樹の役に立ちたかっただけなのに。
レベルとかそんな話してないよ
怒りと悲しみに溢れる涙は、ぎりぎり流れずに目元にたまる。
「っ、はな」
「酷いよっ」
窓枠に手をかけて今にも泣きそうな私に近づいてくる樹