でも、きっとこれって高橋さんにとっては本当に挨拶代わりなんだろうな。ぎこちなさなんて、微塵も感じない振る舞いだったもの。
高橋さんにとっては何でもないことでも、私にとっては大騒ぎしてしまうような一大事だから、そのひとつひとつの行動に面食らってしまう。
やっぱり、まだ私は子供なのかな?
寝起きからドキドキの連続で、気持ちを落ち着けようと冷水で顔を洗ってからリビングに向かうと、コーヒーのいい香りがしていて、その香りに心が落ち着いていくのが分かる。
コーヒーの香りって、リラックスも出来るから好き。
すると、高橋さんがキッチンからコーヒーの入ったマグカップを持って来て、ダイニングテーブルの上に置いた。
「座って」
「はい」
「少し、薄めにしたから」
「ありがとうございます。いただきます」
高橋さんが入れてくれたコーヒーを飲めるなんて、この上ない幸せ。
でも、口元まで持っていったマグカップの縁が、口に触れる直前で止めてしまった。
あれ?
何だろう?
何かが、違う。
この部屋の感じの……何かが……。
あっ!
あまりの驚きに、一瞬片手に持っていたマグカップを落としそうになってしまい、慌ててテーブルの上に両手を添えて置いた。
咄嗟に高橋さんを見ると、高橋さんは何事もなかったように立ったまま自分のマグカップを片手で持ち、右手で私が座っている椅子の背もたれを持ってコーヒーを飲みながら私を見た。
「高橋さん。あの……」
「来て」