新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

これから先も、こういう日々が続くのかな?
会いたいよ……お父さん。
もう会えないと思うと、無性に会いたくなってしまう。
あれ?
何か、鳴ってる?
携帯の着信音が、頭の上の方で鳴っていた。
電話?
電話だ。
慌てて起き上がって携帯の画面を見ると、そこには ―高橋 貴博― と表示されていた。
高橋さん。
「もしもし」
「大丈夫か?」
高橋さんの声が、グッと胸を締めつけた。
「はい。あの、この度は……色々と、本当にありがとうございました」
「とんでもない。こういう時は、お互い様だから気にしなくていい」
「高橋さん……」
そこまで言うのがやっとで、あとは携帯をギュッと握りしめたままだった。
「今から、行っていいか?」
「えっ? あっ……はい」
唐突に言われ、何も考えないまま返事をしてしまった。
「無理にとは言わないが、平気か?」
急に聞かれたが、とても穏やかなその声にやはり安堵してしまう。
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、あと30分ぐらいしたら着くから」
「はい。気をつけて」
高橋さんに会うのは、お葬式の時以来。でもお葬式の時も慌ただしかったから、殆ど話も出来なかったし、受付をしてくれていたので参列者のお香典のお金を受け取る時も事務的な会話と挨拶しか交わさなかった。
そう言えば、今何時なんだろう?
時計を見ると、すでに19時を回っていた。
さっき洗濯物を取り込んで畳んだ時は、まだ16時ぐらいだったのに……。それから何もせずに、ボーッとしていたんだ。
ハッ! 
こうしていては、いけない。部屋着のままだし、メイクもしていない。早く支度しないと。
慌てて着替えを済ませ、少しだけメイクをしようと鏡を見た。
うわっ。