新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「えっ? あっ、すみません。そちらにまで」
お店の駐車場に車を停めると、シートベルトを外した高橋さんが運転席の床に落ちていたドラッグストアのポイントカードを拾って差し出してくれた。
ああ。もう、何やってんだろう。恥ずかしい。
初めて入るお店だったけれど、とても落ち着いた感じのイタリアンらしい雰囲気のお店で、
パスタのメニューも豊富にあってどれにして良いのか迷って決めかねていると……。
「じゃあ、パスタとピザを頼んでシェアする?」
「はい」 
良かった。名案を出してくれて。
先週の土曜日。私が帰った後、あれから明良さんと仁さんと遅くまで飲んでいたらしく、結局2人とも高橋さんの部屋に泊まったとのことだった。
「でも、明良さんは翌日仕事だって仰ってましたが、大丈夫だったんでしょうか?」
「ああ。シャワー浴びて、ケロッとして出ていった」
「そうなんですか。明良さんは、やっぱりパワフルですねぇ」
「いや。単純で鈍感なだけなんじゃないのか? だから、疲れも感じない」
「た、高橋さん」
「フッ……」
「アッハ……」
本心で言っているんじゃないことは、直ぐに分かる。高橋さんも明良さんも仁さんも、お互いを本当に信頼していて、そしてリスペクトしているのが凄く分かるもの。