新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

またコースターを今、一瞬ひっくり返したよね?
慌てて、コースターから視線を高橋さんに向ける。
すると、高橋さんはビールのグラスを置かれる寸前に、そのコースターを素早く左手で裏返した。
そこには、きっと携帯電話の番号であろう数字が羅列されていた。
その高橋さんの動作に驚いたキャビンアテンダントは、一瞬グラスを置こうとしていた手が止まった。
「生憎、俺は今、彼女との時間だけで手一杯でね」
高橋さん……。
そう言うと、高橋さんは右手にしている時計を翳し、柔らかく微笑みながら少し小首を傾げて時計の文字盤を見た。
そんな高橋さんの優しさに触れ、嬉しさを噛みしめ、同じように右手にしているお揃いの時計に左手でそっと触れながらいつまでも見ていた。

刻み始めたばかりの2人の時間。
この時間を慈しみ、大切に、憧憬を抱きながら。


 『新そよ風に乗って(憧憬)』      完                        


  and……
next volume to be continued



末筆ながら、いつもARIKIパンツの名称の記載を快諾して下さいました、有木株式会社様に感謝致しますと共に、次編以降もご協力頂ける旨、ご了承頂けましたことに重ね重ね御礼申し上げます。