新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「この落とし前は、ちゃんとつけても・ら・う」
「あっ……い、いえ、それは……ちょ、ちょっと待って下さ……アンッ……ンンッ……」
「さっき、ツリーの前で俺に憎まれ口叩いた分も倍返しな?」
そんな……。
「キャッ!」
起こされた途端、高橋さんに抱っこされて寝室まで連れて行かれてしまい、パッキングがまだ途中だからとか、いろいろ言い訳してみたけれど、そんなことは一切聞き入れてもらえるはずもなく……。
昨晩に引き続き、高橋さんの優しさに包まれながらゆっくりと沢山の愛を刻まれた。
しかも……あんなことや、こんなことまで……。
何もかもが初めてのことばかりで、思い出しただけでも顔から火が出そう。
「もう、お嫁に行けない」 と、思わず言ったら
「まだまだ、初級編?」 と、軽く高橋さんにいなされてしまった。
無論、翌朝は腰砕けで使い物にならず、またしても高橋さんに笑われてしまったのは、言うまでもなく……。

夕方、空港のカウンターで高橋さんが出国の手続きを行っている時、ふと見るとロビーのガラス越しにチラチラと雪が舞っているのが見えた。
「あっ。 雪……」
「ん?」
私の声に手続きを済ませ、パスポートを胸ポケットにしまいながら高橋さんが振り返った。
「あぁん。 どうせなら、昨日とか一昨日に降ってくれれば良かったのになぁ……」
残念な気持ちから、窓越しに空に向かって恨めしく呟いた。
「フッ……。 さあ、行くぞ。 ほら、パスポート」
「はぁい」
パスポートを受け取りながら、雪が名残惜しくて声のトーンが低くなってしまった。
飛行機が離陸して暫くすると、シートベルトのサインが消えてキャビンアテンダントがおしぼりを配りながら飲み物のリクエストを聞きに来た。
いつものように高橋さんはビールで、私はグアバジュースを頼む。
先に、私の方にコースターを置いて、その上にグアバジュースを置いてくれた。 そして、高橋さんのビールを置くためにコースターをテーブルの上に置く。
エッ……。
まただ。