新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「で、でも、ミサさんの後に付き合った人とか、いっぱい居たはずですよね? 会社に入ってからだって、絶対居たと思うし」
「なんだよ。 いきなり興奮して」
知らぬ間に、早口で捲し立てていたようだ。
でも、高橋さんだよ?
絶対、信じられない。
「だって、きっともっと付き合っていた女性が居たはずです。 それなのに、どうして……。 ミサさんが、前の彼女って……」
「過去に俺が本気で人を好きになったのは、ミサだけだったから」
ああ……。
やっぱり面と向かって言われると、胸が痛い。
「そんな……。 で、でも、あとの人達は……」
「ん? あとは……全部、遊び?」
そんな……だからなの?
だから、女の人の扱いに慣れているんだ。 
それにしても、ミサさん以外の人は遊びにしか思えないなんて、どんなに魅力的な女性だったんだろう。
でも……腕時計に、そんな大切な思いが込められていたなんて知らなかった。
「ごめんなさい……。 そんな深い理由や意味があったなんて知らなくて……本当にごめんなさい」
「いや、別にいいんだ」
何が、いいの? 
どういうこと?
不安になって、高橋さんの顔を見た。
その表情はとても穏やかだったが、真剣で、尚かつその瞳の眼力は強く私を捉えて離さない。
「俺は、もう……」
そう言い掛けて、繋いでいた手を離した高橋さんが右手で自分の髪を掻き上げた際、手首にはめていた腕時計の文字盤にクリスマス・ツリーのイルミネーションの光がキラキラと反射して眩しかった。
「いつまで経っても、進歩のない人間だよな」
高橋さん……。