高橋さんが、ギュッと私の鼻にティッシュをあてたので、黙ったまま頷いて鼻をかんだ。
高橋さんが、ティッシュをゴミ箱に捨てようとして体を右横に傾け、ソファーの脇に手を伸ばした。
「返してねーよ」
体勢を戻しながら、高橋さんはそう言った。
「えっ?」
「時計は、返してない」
「ほ、本当ですか?」
高橋さんは体勢を元に戻すと、煙草に火を点けた。
「じゃ、じゃあ、今まで何処に行ってたんですか? あっ……」
また鼻水が出て来てしまったので、テーブルに置いてあったティッシュを取ってきて今度は自分で鼻をかむ。
すると、高橋さんがそのティッシュをよこすよう無言で手を出してくれたので、素直にそれに従った。
高橋さんは立ちながら煙草の火を消すと、ゴミ箱にそのティッシュを捨ててテーブルの方に行ってしまった。
その動きを目で追っていると、先ほどテーブルの上に置いた幾つかの買い物袋の中を覗いて中身を確認し、そのうち2袋だけ持ってソファーに座っている私の方を振り返ると、少し上に掲げてみせた。
「夕飯の買い物?」
そう言うと、その袋を持って高橋さんはキッチンに行ってしまった。
夕飯の買い物って……。
夕飯の買い物?
そう言えば、朝ご飯が足りないとか言ってた気がする。
すっかり、そんなことなど忘れてしまっていた。
冷蔵庫の扉の開く音がして、きっと高橋さんが買ってきた物をしまっているのだろう。 慌ててキッチンに向かうと、すでに買ってきたものをしまい終えた高橋さんがキッチンから出てこようとしているところで、入り口で鉢合わせしてしまった。
慌てていたので、ぶつかりそうになって後ろに仰け反った拍子に転びそうになったところを高橋さんに支えられた。
「す、すみません。 あの……」
そう言い掛けたところで、高橋さんが腕時計を見た。
「ランチも遅かったし、まだお腹空かないだろ?」
「えっ? あっ……はい」
咄嗟に返事をしてしまい、言い掛けた言葉が宙に浮いてしまった。
泣いて落ち込んで、不安になっていたので、お腹なんて空いていない。
「じゃあ、まだ時間も早いから、これからちょっと出掛けよう」
高橋さんが、ティッシュをゴミ箱に捨てようとして体を右横に傾け、ソファーの脇に手を伸ばした。
「返してねーよ」
体勢を戻しながら、高橋さんはそう言った。
「えっ?」
「時計は、返してない」
「ほ、本当ですか?」
高橋さんは体勢を元に戻すと、煙草に火を点けた。
「じゃ、じゃあ、今まで何処に行ってたんですか? あっ……」
また鼻水が出て来てしまったので、テーブルに置いてあったティッシュを取ってきて今度は自分で鼻をかむ。
すると、高橋さんがそのティッシュをよこすよう無言で手を出してくれたので、素直にそれに従った。
高橋さんは立ちながら煙草の火を消すと、ゴミ箱にそのティッシュを捨ててテーブルの方に行ってしまった。
その動きを目で追っていると、先ほどテーブルの上に置いた幾つかの買い物袋の中を覗いて中身を確認し、そのうち2袋だけ持ってソファーに座っている私の方を振り返ると、少し上に掲げてみせた。
「夕飯の買い物?」
そう言うと、その袋を持って高橋さんはキッチンに行ってしまった。
夕飯の買い物って……。
夕飯の買い物?
そう言えば、朝ご飯が足りないとか言ってた気がする。
すっかり、そんなことなど忘れてしまっていた。
冷蔵庫の扉の開く音がして、きっと高橋さんが買ってきた物をしまっているのだろう。 慌ててキッチンに向かうと、すでに買ってきたものをしまい終えた高橋さんがキッチンから出てこようとしているところで、入り口で鉢合わせしてしまった。
慌てていたので、ぶつかりそうになって後ろに仰け反った拍子に転びそうになったところを高橋さんに支えられた。
「す、すみません。 あの……」
そう言い掛けたところで、高橋さんが腕時計を見た。
「ランチも遅かったし、まだお腹空かないだろ?」
「えっ? あっ……はい」
咄嗟に返事をしてしまい、言い掛けた言葉が宙に浮いてしまった。
泣いて落ち込んで、不安になっていたので、お腹なんて空いていない。
「じゃあ、まだ時間も早いから、これからちょっと出掛けよう」

