新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

それに気がつかないのは、いつも私で……。
エッ……。
それに気がつかないのは、いつも私……って、もしかしてあの時計にも、何か意味があったのかもしれない。
それを聞く前に、教えてもらう前に、私から拒絶してしまった。
何故、今日あのお店に行ったのかも、そしてあの時計の成す意味までも私は否定してしまったんだ。
ああ、もう!
きっと、そうだ。
考えてみれば、高橋さんが私を愛人のように思っているなんてことはないのに。
高橋さんに限って、絶対そんなはずはない。
そうでなければ、こんなに長い時間掛かって私に向き合うために葛藤するなんてことはなかったはず。
それなのに……。
ドアを見つめ、このドアの向こう側に居るであろう高橋さんの姿を想像していると、居ても立ってもいられなくなった。
ベッドから立ち上がってドアまで走り寄り、慌てて鍵を開けて部屋を飛び出した。
しかし、リビングを見渡したが高橋さんの姿はない。
何処?
高橋さん。 何処?
サッシから外を覗いたが、ラナイにも居ない。
お部屋に居るのかな?
高橋さんの部屋に向かう途中、キッチンを覗いたが、キッチンにも居なかった。
ドアの前に立ち、大きく深呼吸してドアをノックした。
あれ? 
どうしたんだろう。 返事がない。
少し躊躇いがちだったので、ノックする音も小さかったから聞こえなかったのかなと思い、
もう1度、今度は少し強めにノックした。
それでも、高橋さんの応答はない。
何で?
もしかして、寝ているの?
それとも、シャワーでも浴びてるのかな?
でも、気になるし……。