新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

イライラする……これって、もしかして……やきもち?
キャサリンさんに、当てつけのように目の前で高橋さんとhugを見せつけられて、カーッと頭に血がのぼってしまっている。
「じゃあ、聞くが……。 お前に黙ってキャサリンに会うのは、おかしいだろう? そうかといって、お前に今日キャサリンに会うから一緒に来てくれと言っても、恐らくお前は嫌がるだろう。 言ったところで、お前は多分ホテルで待ってると言うはずだ。 たとえ待っていてもらったとしても、お前を俺がホテルに戻るまできっと不安にさせるだけなんじゃないのか? だから、一緒に連れてきたんだ。 それに、今日は少しでも時間をロスしたくないし、何より俺はキャサリンのことを中途半端のままで帰りたくない」
「そんな……」
高橋さん。
そこまで、考えてくれていたんだ。
怖いくらいに、私の性格は全部お見通しなの?
「だから、キャサリンには俺がこの店に来てくれるよう、今朝電話で頼んだんだ。 まあ、昨日預かった物を返すからとは言わなかったが……」
そうだったんだ。
浅はかな考えだけで行動してしまったことに、自己嫌悪に陥りながら俯いた。
「ほら。 もう、中に入るぞ」
ドアボーイが絶妙のタイミングでドアを開けてくれたので、戸惑いながら高橋さんの顔を見ると、中に入るよう私の背中に手を添えた。
再度、店内に入ると、キャサリンさんがこちらを直視しているのがよく分かり、まるで睨まれているようでそこから1歩も前に進めず萎縮してしまった。
「I’m sorry to have kept you waiting」
高橋さんの言葉に、キャサリンさんは両手を挙げて首を傾げたが、高橋さんは先ほどのリボンの掛かった箱をキャサリンさんにもう1度差し出した。
「I can't take this……give back」
「why? I……necessary……I need you!」
早過ぎて、何を言っているのか分からない。
でも、キャサリンさんが納得していないということだけは分かる。
「gah!」
キャサリンさんは大きな感嘆の声をあげると、高橋さんが差し出していた箱を渋々受け取った。