新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「何処に、行くんだ?」
声は穏やかだったが、少しだけ視線が鋭く感じられる。
「あ、あの、私……先にホテルに帰っていますね」
慌てて、今度は出入り口の方に向き直って歩き出そうとしたが、そんな私の腕を高橋さんは離してくれるどころか、尚更掴んでいる手に力を込めた。
「うわっ」
後ろ向きのまま吸い寄せられるように、高橋さんの真横まで引っ張られてしまった。
「いいから、此処に居ろ」
高橋さんの少し高圧的な言い方にもカチン! と来たけれど、それ以上にキャサリンさんが微笑みながら私に向かって手を振って、別れの挨拶をしている姿に余裕すら感じられ、自分が情けなくなってしまった。
ああ。
もう、一緒に居たくない。 
とにかく、一刻も早く帰りたい。
2人のプレゼントの受け渡し風景なんて、見たくない。
「嫌です……」
キャサリンさんの方へ向き直り掛けていた高橋さんが、私の声に無言で振り向いた。
「高橋さん。 本当に帰りたいので、離して下さい」
しかし、高橋さんはまた直ぐキャサリンさんの方に向き直った。
「Just a minute」
「OK!」
高橋さんは、キャサリンさんにそう告げると、私の手首を引っ張って一旦お店の外に出た。
「どうした?」
両手で私の手首を持って向かい合った高橋さんに、首を傾げながら問い質された。
「だって……何で……何で、私が……高橋さんがキャサリンさんにプレゼントをあげる場面に、一緒に居なければいけないんですか? 別に、私が居なくてもいいじゃないですか!」
興奮して、声を荒げてしまった。
「はぁ……」
高橋さんは、私の両手首を持ったままの状態で、溜息をつきながら目を瞑った。
「プレゼントじゃない。 昨日、キャサリンから渡されたんだが、受け取れないと断ったんだ。 だが、昨日は色々あってそのままになってしまっていたから、今日返すために……」
「だ、だったら、何もわざわざ私と一緒じゃなくてもいいじゃないですか?」
聞いていてイライラしてきてしまい、高橋さんの言葉を遮るように捲し立ててしまった。
エッ……。