新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「そうだな。 New Yorkというところは、煌びやかな派手な世界だと思われがちだが、その裏にあるものは、かなり泥臭い。 小手先だけの稚拙なものは、あっという間に見透かされ、受け容れられる余地もない。 本物だけが、通用する空間。 人々の感性も秀逸で、目も耳も研ぎ澄まされている。 その空間に生きられるよう、ドロップアウトしないよう、地道に人々は自己啓発に没頭する。 だからこそ、この華やかな世界が成り立っているんだ。 世界中から人々が集まる、表も裏も含めた魅惑的な街。 それが、New Yorkだ」
巨大な街の表と裏。 大人な街だと感じられるのは、そういうことからなんだ。
「何か、凄いですね。 高橋さんがおっしゃると、尚更そう感じます」
「フッ……。 昔、何も知らなかった俺も、そう教わった」
「そうなんですか?」
一通り、ホリデーウィンドウを眺め終わって、高橋さんが入りたいといった1軒のショップに入ろうとすると、そこにもドアボーイがやはり立っていて、見るからに高そうなショップだった。
何のショップなんだろう?
「高橋さん。 此処って、何のショップなんですか?」
「ん? 入ってからのお楽しみぃ」
いったい、此処は……。
「Hello!」
にこやかにドアボーイがドアを開けてくれて、中に入った。
うわぁ……。
鮮やかなブルーの絨毯に驚きながら、思わず周りをキョロキョロしてしまう。
そして、壁面の1ヵ所に目が釘付けになった。
あっ!
このロゴって……。
確か、いつも高橋さんがしている腕時計のブランドと一緒。
「高橋さん。 確か、此処のロゴマークの時計をお持ちでしたよね? また、買われるんですか?」
「ああ。 いや、ちょっと……な」
高橋さんは、何となく言葉を濁した。
「Hello!」
またドアが開いて、外の冷たい空気と共にお客さんが入って来たようだった。
「TAKA!」
エッ……。
この、聞き覚えのある声は……。
振り返ると、キャサリンさんが立っていた。
高橋さんに気づいたキャサリンさんが、私をチラッと見た後、こちらに近づいて来た。
どういうこと?