新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

色々、見られちゃったし……。
「フッ……。 なぁに、やってんだよ? お前は、モグラかぁ?」
な、何、モグラって?
思わず顔を上げると、目の前に高橋さんの顔が度アップで迫っていた。
「なぁにぃ?」
うっ。
すると、尚一層高橋さんが迫って来たので、ギョッとして高橋さんから離れようと思って反対側に向こうと寝返りを打とうとした。
「おっと! 逃げちゃ、だぁめ」
うわっ。
高橋さんに、背中を引き寄せられた。
けれど、それから別に高橋さんは何をするわけでもなく、ただ私の頭を撫でてくれているだけで、その仕草に安心して目を閉じてしまった。
何だか、夢みたい。
高橋さんと一緒にこんな癒される朝を迎える日が来るなんて、思ってもみなかった。
本当に、私と向き合ってくれたんだと実感が湧いてきて、また涙が溢れそうになって慌てて高橋さんの胸に顔を埋めた。
「ん? どうした?」
高橋さんの声が、押し当てている顔に胸を伝わって響いて聞こえる。 
声が出せなくて、首を横に振った。
「フッ……。 泣き虫」
エッ……。
何で、分かっちゃったの?
高橋さんは、私の心が見えるみたい。
「今、コーヒー落として来るから、ちょっと待ってろ」
高橋さんが、私の体を引き離してベッドから降りて立ち上がった。
「あっ。 それなら、私が……」
急いで起きあがって、高橋さんの後を追うようにベッドから降りようとした。
「ああ。 お前はいいから、ジッとしてろ。 多分……」
「いえ、私がやりま……キャッ……」
ベッドから降りようとして立ち上がった途端、腰砕けのように立ち損なって、床に尻餅を突いてしまった。
「いったぁ……」
「ハハッ……。 だから、言っただろ? ジッとしてろって」
「だって……。 た、高橋さんが、いけないんですよ! あ、あんな……」
そこまで言い掛けて恥ずかしくなってしまい、黙ってむくれていた。
だいたい、何で高橋さんは平気なの?
どうして、普通にしていられるの?
体力の差? 
経験の差?