新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

高橋さんの両手が私の頬を包みながら、角度を変え、向きを変えながらどんどん深層の域に達しようとしているのが分かる。
息が苦しくなっているのに、それと同時に体がふわふわしてきている。
「ンッ……チュッ……ンンッ……チュッ……」
ベッドサイドの小さな灯りだけが灯る部屋の中で、高橋さんと私の唇が重なり合う音だけが響く。
ふと、高橋さんの唇が離れた。
中途半端にベッドの縁から投げ出されていた両足を高橋さんが持って、そのまま私を抱き抱えると、ベッドの上にそっと寝かせてくれた。
ハッ……。
高橋さんの左手が、右耳の後ろから首にかけてそっとなぞる。
その行動のひとつひとつに反応して、鼓動は早くなるばかり。 どう対処していいのか、分からない。
「抱いていいか?」
その一言に、心臓が下に落ちていってしまったようで、驚きと一段と煩くなった鼓動に思わず左手を胸の上に置いた。
「高橋さん。 私……」
「ん?」 というように、真上にいる高橋さんが小首を傾げた。
「私……」
今、きっと凄く自分でも不安な顔をしていると分かる。
「あの……私……」
高橋さんの右手が、優しく私の髪を撫でた。
「フッ……。 知ってる」
エッ……。
知ってるって……。
「俺が、分からないとでも思ったのか?」
恥ずかしさのあまり、言葉が出なかった。
何で?
どうして、知ってるの?
高橋さんは、まだ私が男の人を知らないって何時から分かっていたの?