新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「別に、お前が拒んだところで、俺の気持ちがどうこうなるわけじゃないから、安心しろ」
「高橋さん……」
高橋さんが、私を気遣って言ってくれている。 
そんな優しさがひしひしと伝わって来て、恥ずかしさと照れ隠しから視線を外して俯きながら首を横に振ると、その拍子に頬に触れていた高橋さんの右手も離れてしまった。
「あの、1つ伺ってもいいですか?」
「ああ」
どうしても、気になっていることがある。
昔、高橋さん本人が言っていたこと。
「高橋さんが、前に仰いましたよね? 会社の子には、手を出さないって。 それって……」
「フッ……。 何を今更」
高橋さんは、真剣に聞いているこちらのこと等、意に介さない様子で笑っている。
「俺を、嘘つきだとでも言いたいのか?」
高橋さんの瞳が笑っていて、何と応えていいのか分からない。
「そ、そんなことはないです。 高橋さんは、正直だから……。だから……でも、私……」
「はぁ。 焦れったい」
うわっ。
そう言うと、高橋さんは再び私の手首を掴んで、そのまま自分の部屋のドアを開けて私を中に入れると、直ぐにドアを閉めてしまった。