新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

高橋さんの瞳が、私を捉えて離さない。
そんな高橋さんから、私も視線を外すことが出来ない。
以前、高橋さんが言っていた。
私と向き合える時が来たら、その時は私のすべてを貰うって……。
もしかして、高橋さんは私と向き合ってくれるの?
ミサさんは、もう高橋さんの心の中には居ないと言っていた。 でも、それは……高橋さんには悪いけれど、まだ信じられない。
本当に、私と向き合ってくれるってこと?
今が、その時なの?
どうしよう。
凄く嬉しいはずなのに、でも何だか恐い。
高橋さんのことは、信じている。
だけど、本当なのかどうか、半信半疑になってしまう。
もう、何度も何度も私の勘違いで、疑ってしまったりしてその都度後悔して……。 学習したつもりが、またその繰り返しで振り出しに戻ってしまったり。
いざ、面と向かって言われると、心の準備というか、思いも寄らなかったというか、ただ、ただ、驚いてしまって……。
ずっと待っていても、まだミサさんのことを忘れられないのかな?
もっと、時間が掛かるのかな?
そんな風に思っていたから、まだまだ向き合ってくれるのは、もっと先のことだと思っていた。
それなのに、あまりにもその時が突然やってきて、心の準備も出来ていない。
これまでの出来事を思い出しながら、ジッと高橋さんを見上げていたが、私の気持ちを読み取ったのか、高橋さんが掴んでいた手首を離し、その離した右手で私の頬に触れた。
ああ……この温もり。この感触。
ずっと感じたかったし、触れたかった。
ハッ!
高橋さんに、触れたいと思っている?
確かに、触れていたいと素直に思う。
出来ることならば、ずっと……。
「高橋さん。 私……」