新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

「New Yorkの夜は、危ないですから」
「エディさん……」
すると、エディさんは私の隣に来て、ショー・ウィンドウを覗き込んだ。
「このショー・ウィンドウを見ながら、泣いていたのですか?」
ハッ!
慌てて頬を撫でると、涙は流れてはいなかった。
「目が、REDです。 哀しいこと、ありましたか?」
エディさんから唐突に言われた言葉が、胸の中に飛び込んできた。
哀しいこと……。
心配してくれているエディさんに、引きつりながら微笑んで首を横に振った。
「好きな人に、思いが通じないのは哀しいことです」
エディさんは、私の気持ちが分かっているのかもしれない。
隣に立っているエディさんの顔を見上げると、ショー・ウィンドウを見つめたままだった。
「貴女も僕も、Same feeling。 同じ気持。 でも、僕は諦めないです。 だから、貴女も諦めないで下さい」
「エディさん……」
ああ。
エディさんは、キャサリンさんのことが本当に好きなんだ。
こんなに思ってくれているエディさんが居るのに、キャサリンさんは何故……。
「キャサリンには、僕が必要だから」
エディさんの気持が痛いほど分かって、黙って何度も頷くしかなかった。
キャサリンさんには、自分が必要だと思えるエディさんが羨ましい。
それに比べて、私は……。
「Mr.高橋にも、貴女が必要なのではないですか?」
高橋さんに、私が必要?
「エディさん。 ありがとう。 でも、それは残念ながら違うの。 その反対。 私には高橋さんが必要だったけれど、高橋さんには私は必要じゃなかったみたい。 私の勘違いだったみたいなの。 アハハッ……」
無理して笑った声が、冬の夜の匂いに染み込んで虚しく響く。
涙が溢れそうになって、空を仰いだ。
目を瞑って、冬の寒さで引き締まった冷たい空気を吸い込むように深呼吸をする。