新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

綺麗に髪の毛をアップにしてもらって、鏡に映っている自分は何だか別人のよう。
高橋さんが置いていった先ほど買って貰ったワンピースに着替えて、高橋さんが迎えに来てくれるのを待っていた。
程なくして高橋さんがお店に登場して、知らない場所に独り取り残された感じだったので、高橋さんの顔を見た時は緊張から解き放たれてホッとして気が抜けてしまっていた。
何て言ってくれるかな。
少しは、大人っぽく見えるかな。
近づいて来た高橋さんに、淡い期待を胸に少しドキドキ、わくわくしていた。
「ハハッ……。 馬子にも衣装だな」
高橋さんが、車の鍵を振り回しながら天井を仰いだ。
嘘……。
酷い。 期待して、損しちゃった。
高橋さんが、ホテルの玄関に置いてあったヒールをいつの間にか持って来てくれたみたいで、そのヒールに履き替え、暗い気持ちのままお店を出て目の前に停まっている高橋さんの車に乗ってシートベルトを締めた。
すると、運転席に座っていた高橋さんが私の態度を変に思ったのか、顔を覗き込むようにしてこちらを見た。
「どうした?」
何でもないの。 気にしないで欲しい。
黙って、首を横に振った。
「フッ……」
今、声を出したら涙が出てきそう。
高橋さんは、それ以上聞くことはなく車を発進させた。
暫く走っていると、前方に自由の女神が見えてきてハドソン川の辺に高橋さんが車を停めると、冬のニューヨークは夕陽に包まれていた。
「うわぁ。 綺麗……」
水面に映る夕陽をバックに、マンハッタンのビルも茜色に染まっている。
「綺麗だ」
「ニューヨークの夕陽も、綺麗ですね」
目の前に広がる茜色に染まった夕陽を見ながら、そう呟いた。
「そうじゃない」
エッ……。
何で?
こんなに、綺麗な夕陽なのに……。