新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

思い立ったように高橋さんが路地を曲って暫く行くと、小さなビルのエレベーターに乗った
「何処に、行くんですか?」
「いいから」
高橋さんに言われるまま、停まった階でエレベーターを降りると、目の前にお店があった。
此処って……美容院?
店内に入ると、何だかどうも高橋さんと知り合いのようで、スタッフの人と高橋さんが話をしながらしきりに私を見ている。
そして、高橋さんと美容師さんがこちらに来た。
「じゃあ、後で迎えに来るから」
「えっ? ちょ、ちょっと、高橋さん!」
高橋さんは何も言わずに、お店から出て行ってしまった。
どういうこと?
もぉ……。
私だけ置いていかれても、困るのに。
すると、美容師が何か私に話し掛けてきたが、何を言っているのかあまりよく分からず戸惑っていると、シャンプー台に案内された。
シャンプーをしてもらっている間は、気持ちよくてウトウトしそうになってしまったが、終わってまた先ほどの席に案内されてからは、何とも居心地が悪くて落ち着かない。
美容師が棚から取り出したカットクロスに袖を通すよう促されて、袖を通す。
もしかして、髪の毛を切られちゃうの?
とんでもないヘアスタイルになっちゃったら、どうしよう。
不安になりながらも言い出せなくて、美容師の行動をジッと見ていると、目が合って微笑まれてしまった。
シザーこそ手に持っていなかったが、何をされるのか分からずドキドキしながら、時折、美容師に話し掛けられて、言葉があまり通じなくて身振り手振りで会話を成立させようと必死になっていた。
言葉の壁を打破しようと会話に集中しているうちに、2時間ぐらい経って出来上がったヘアスタイルを見て驚いた。