新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

高橋さんが買ったものって、いったい何に使うものなんだろう?
ショップを出て駐車場まで道程、高橋さんに尋ねてみた。
「今、買われたものって、高橋さんのキーホルダーにも付いていますけど、あれは何なんですか?」
「ああ、これ? これは、アロマ・ストラップ」
「アロマ・ストラップ?」
アロマって、あのアロマのこと?
「じゃあ、高橋さんのキーケースに付いているものも、アロマ・ストラップだったんですか?」
「これのことか?」
高橋さんが、ジャケットのポケットから車のキーホルダーを出して、私の掌にのせた。
「あっ。 やっぱり、同じ物だったんですね」
そのストラップに顔を近づけてみると、仄かに高橋さんの香りが漂っていた。
いいな、これ。
私も、欲しい。
「高橋さん。 ちょっと、待っていてもらってもいいですか? 私も、このアロマ・ストラップが欲しいので、今からもう1回行って買って来ます」
高橋さんにキーホルダーを返して、急いでショップに戻ろうとした。
「うわぁ」
背後から、いきなり高橋さんに腕を引っ張られたので驚いて声を出してしまった。
「行かなくていい」
「はい?」
「これ、お前のだから」
「えっ……?」
『これ、お前のだから』 って言われ……えっ?
「昨日、誕生日だっただろ?」
あっ……。
「そうでした。 私、すっかり忘れてました」
時差の関係もあって、今日が何日なのかよく分からなくなっている。 もっとも、昨日は……。
「そうだろうな。 昨日、あれだけ酔っぱらっていたしな。 ハハッ……」
「もう。 その話は、やめて下さい」
「アロマも買い占めたんだから、これに入れて持ち歩けばいい」
悪戯っぽく笑いながら言ってくれた高橋さんだったけれど、私の誕生日を覚えていてくれたんだ。
「あ、あの……」
「はい。 お前に」